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エジプトの博物館 襲撃 収蔵品すべて失われる ! ! [ニュース]

  今回の博物館襲撃による文化財の略奪は、政治的騒乱のどさくさの中で
行われました。 理解を深めるために、前提となっているエジプトとアラブ世界
の状況を説明することから始めたいと思います。


 【 アラブの春 】

 2010年12月、チュニジアにおいて民主化を求める暴動 (ジャスミン革命)
が起こった。

 チュニジア中部にて失業中だった26歳の男性が果物や野菜を街頭で販売
し始めたところ、販売の許可がないとして警察が商品を没収。 これに抗議す
るために男性はガソリンをかぶり火をつけ、焼身自殺を図った。

 チュニジアでは失業率が非常に高く、この男性と同様、街頭で果物や野菜
を売り生計を立てる失業者も多かった。

 このトラブルが、大学卒業後も就職できない若者中心に、職の権利、発言の
自由化、大統領周辺の腐敗の罰則などを求め、全国各地でストライキやデモ
を起こすきっかけになったとされている。

 その後デモが全年齢層に拡大し、デモ隊と政府当局による衝突で死亡者が
出るなどの事態となる。

 高い失業率に抗議するデモは、やがて腐敗や人権侵害が指摘されるベン=
アリー政権の23年間の長期体制そのものに対するデモとなり、急速に発展し
ていった。 その後、チュニジアの政権は崩壊した。

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 チュニジアにおける運動の勢いは、その後国境を越えて周辺諸国に波及、
アラブ各国においてかつてないほどの大規模な民主化を要求するデモや政
府への抗議活動へと発展していく。

 2013年になっても各国の反政府・民主化要求のデモや抗議活動は継続
されており、これら一連の騒乱を総称して 「アラブの春」 という


 【 エジプト 】

 エジプトは1981年以来、軍の支持を受けたムバラク大統領が30年以上に
わたって政権を維持してきたが、2010年、物価の高騰や失業率の上昇を背
景に、「アラブの春」 の勢いを受けた反政府抗議デモが激化。

 活動を担った勢力には大きく2つの系統がある。 一方はイスラームの価値を
重視し、貧困層の支持を受けた 「ムスリム同胞団」 。

 そしてもう一方は、中間層を中心とするリベラル派や、エジプトでは少数派の
キリスト教徒など、イスラームとは距離を置く勢力。

 共にムバラク政権に弾圧されてきた両者が、これを打倒するため協力した。


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 運動の広がりを受けてムバラク氏は11年2月に大統領を辞任。 その後、軍
もムバラク政権から距離を置くことになり、ムバラク時代の終焉を決定づけた。
 

 その後、軍による暫定統治のもとで、12年5月から6月にかけて大統領選挙
が実施され、ムスリム同胞団に基盤を持つモルシ氏が当選した。

 ところが、新しく誕生したモルシ政権のもとでこれら諸勢力間の対立は先鋭化
していくことになる。

 抗議デモを武力で鎮圧し多くの死傷者を出した責任を問われていたムバラク
氏の2人の息子に対して、12年6月に裁判所が証拠不十分で無罪判決を出し
たことから、各地で暴動が発生。

 また、12年11月に与党が強引に採決した新憲法の草案は、リベラル派や
キリスト教徒だけでなく、旧体制派からも “イスラーム色が強すぎる” と批判が
噴出した。

 さらに、物価の高騰はおさまったものの失業が逆に増えたことが反モルシ派
の結束を促し、抗議デモを激化させることに。

 7月4日に暫定大統領に就任したマンスール最高憲法裁判所長官は、早い時
期に選挙を実施すると言明。

 しかし、仮にそうなったとしても、各勢力間の根深い対立が容易に解消すると
は考えにくく、エジプトに安定した民主主義が根付くには相当の期間が必要だと
いえるだろう。


 【貴重な文化財の盗難】

 騒乱が続くエジプトで先週、古代エジプトの美術品や文化財を収蔵する 「マラ
ウィ国立博物館」 が襲撃され、「聖獣」 とされるヒヒなどのミイラや彩色木棺など、
館内に展示されているほぼ全ての収蔵品が略奪されたことが明らかとなった。

ムルシ前大統領支持派がカイロで強制排除された14日から15日にかけての
犯行だとみられている。


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 博物館が丸ごと略奪されるという前例のない被害で内外の関係者に衝撃を与
えている。

 考古省の暫定的な調査によると、収蔵品1089点のうち1040点が盗まれ、重
くて持ち去られなかった像などは傷つけられていた。 犯人は不明で、警備員は射
殺されていたという。

 これまでに返還、回収されたのはごく一部にとどまっている。 早急に盗まれた
文化財のリストを作り、国外への持ち出しや国際市場での売買ができないように
対策を取る方針だ。


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