おら、革ジャンが好きだ ! ⑤.「革」 について理解しよう ! (上) [ファッション]
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製革の作業には、大きく分けて準備工程、なめし工程、再なめし・染色・
加脂工程、仕上げ工程があります。
【 皮 と 革 】
動物の皮膚を剥いだあと、何の加工もなされていない 「原皮状態」 を
指して「皮」 と言い、その皮に 「なめし」 と言われる防腐処理を施し、もの
作りの材料として再生したモノを 「革」 といいます。
《 な め し 》
「なめし」 の目的は主に3つ。
①.防腐処理 (耐酵素性・耐薬品性)
動物の皮は生きているので、そのままだと用意にバクテリアに分解され
腐敗してしまいます。 これに対して、なめし剤を付与することで革の主成
分であるたんぱく質(主にコラーゲン繊維)に化学変化を起こして変性させ
ることで腐敗が防止されます。
②.耐熱性の付与
通常、哺乳類の皮の耐熱性は62℃~63℃前後であるが、なめしを行
うことで耐熱性が上昇します。 たとえば「牛革タンニンなめし革」の耐熱性
(熱収縮温度)は75℃~90℃、「牛革クロムなめし革」 であれば95℃~
120℃まで上昇します。
③.革らしさ、しなやかさを与えるため
一般に、皮はそのままだと固くなったり腐敗してしまったりします。 これ
らを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、温かみのある感じを
だすことで革として長く利用することが可能になります。
なめし加工を施すことにより、単に動物の皮膚であった 「皮」 からモノ
の素材としての 「革」 へと生まれ変わります。
その工程は (a).まず始めに体毛と腐敗しやすい脂分を取り除き、
(b).次に 「なめし剤」 にひたすことにより皮の主成分であるたんぱく質
に化学反応を起こして変性させる。 これにより腐敗が防止されます。
(c).仕上げとして、革を柔らかく、またリンス効果を与えるため、主に合
成の脂を再び加える。
原始時代、人類は自らの唾液で皮をなめしていました。 やがて古代に
なると、植物に含まれるタンニンを利用してなめす方法が開発され (タン
ニンなめし)長らく採用されてきましたが、現在では化学薬品で処理される
ことが多くなりました。。
【 タンニンなめし 】
樹木や植物などから抽出した(天然の渋)を利用して革をなめす製法
で、「ベジタブルタンニンング」 とも呼ばれています。
革の切り口(コバ)が茶褐色、つまり 革ジャンでいうと 「茶芯」 になります。
型崩れしにくく丈夫、染料の吸収がよく染色しやすい、吸湿性に富む、使い
込むほどに艶や馴染みがでる、などの特徴があります。
反面、タンニンでなめす場合、タンニンを革の中心部分まで浸透させ
るためにタンニン濃度を徐々に上げていかなければなりません。 そのた
めには30以上の工程を踏まえる必要があり、非常に手間がかかります。
また、それは高コストにつながります。
皮革製品で 「飴色になる」 と表現されることがありますが、それはこ
のタンニンなめしによるものです。 また、カバンなど手縫いを施すモノに
は通常タンニンなめしの材料が用いられます。
「タンニンなめし」 は「クロムなめし」 とはちがって皮膚呼吸をする革の
で過剰なメンテナンスは控え、2~3ヶ月に1度ほど銀面を布で優しく乾拭
きし、牛の脚(膝)から採取した脂で作られている 「ニートフットオイル」 な
どのオイルを塗り込み、防水スプレーをかけます。
また、「マスタングペースト」 や 「ラナパー」 などのWAXを極薄に塗った
のち、馬革ブラシでブラッシングするのも効果的です。
【 クロムなめし 】
硫酸クロム、重クロム酸ナトリウム、カリウム塩、クローム塩などの金
属を用いた科学的な製法。
切り口が青白色、革ジャンで言うと、クロムなめしの場合青っぽいグレー
のような芯になります。 伸縮性が良い、柔軟でソフト感がある、吸水性が低
く水をはじきやすい、耐久力がある、比較的熱に強いなどの特徴があります。
衣料用にはタンニンなめしに比べて工程が少なく低コストのクロムなめし
が用いられる事がほとんどです。
反面、なめし工程で使うクロム物質が焼却により化学反応(酸化)を起こ
し、人体に有害な6価クロムに変化するので処分する際には注意が必要
だという問題があります。
クロムなめしレザーのメンテナンスの周期は2~3ヶ月に1度。銀面を布
で優しく乾拭きし、「マスタングペースト」 や 「ラナパー」 などのWAXを極薄
に塗ったあと、柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了。
上はまったく同じ革をちがう方法でなめしたもの。 左から、タンニン、
コンビネーション、クロム
【 混合なめし 】
混合なめし(コンビネーションなめし)とは、2種類以上のなめし製法の
特性や長所を活かした革のなめし製法。
作りたい革の用途や目的によって、必要な特性に設計できる科学的な
「なめし製法」 です。
「タンニンなめし」 ほどの仕上がりににはなりませんが、タンニン風レザ
ーの感じを出すことが可能で、しかも 「クロームなめし」 程度のコストで製
作できるので、現在のファッション業界で最もポピュラーな 「なめし製法」
となっています。
通常、「クロームなめし」 「タンニンなめし」 の順序でおこない、逆に 「タ
ンニンなめし」 「クロームなめし」 をすることを 「逆コンビネーションなめし」
といいます。
野球のグローブに用いられる牛革グローブレザーなどは 「混合なめし」
が採用されている。
混合なめしのレザーのメンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回ほどで、銀
面を布で優しく乾拭きし、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形W
Xを 「極薄に」 塗ったあと、柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングす
れば完了。
【 油なめし 】
革を動物の油(脂)に漬け込むことでなめす製法。 セーム革などがこの
製法によっています。 非常に柔軟で吸水性・耐水性が高く、洗濯も可能。
(※) セーム革とは、シカ、ヤギなどの皮の銀面を落として油なめしした革。
淡黄色で柔らかく、洗濯も可能。 衣料用、ガソリン濾過用、袋物、ガラスふ
きなどに使用されます。
(※) 革の表面のことを 「銀面」 と言います。 これは、明治時代、外国から
招いた技術者が革の表面のことを 「Grain」 (英語) と発音していたところ、
当時の日本人にはそれが 「ギン」 に聞こえたため、「銀」 という字が当てら
れたことによります。
【 オイルドレザーなめし 】
主に魚脂などの動物油でなめし加工された革で、「オイル・レザー」 「オイ
ルアップ・レザー」 とも呼ばれています。
革に独特の光沢感があり、シットリとした肌触りが特徴的。 また、なめさ
れたオイルによる撥水性が強く、水分による劣化が少ない革だといえます。
メンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回ほど。 銀面を布で優しく乾拭きし、
「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを 「極薄に」 塗ったあと、
柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了。
《 皮革の染色 》
革の色づけ方法は、大きく分けて「染料仕上げ」「顔料仕上げ」「素仕上
げ」 の3通りがあります。
キズやシワが1つもない皮革は存在しません。 このキズを隠すのか生
かすのか? また、経年変化を楽しみたいのか、それとも新品のときの表
情を永く持続させたいのか?
・・・・・・ などを考慮して「色づけ」 と 「仕上げ」 の方法を選びます。
【 染料仕上げ 】 : 塗るのではなく、革に浸み込ませることで色をつける
方法のため、色の状態は半透明。 黒系や茶系の色は非常に美しく仕上
がります。
短所としては、着色剤が革に吸収されるので色ムラが起こりやすく、何
度も着色を重ねなければ均一な色になりません。
また、色の上に他の色を重ねて塗ることができません。 白や薄い灰色
などの、白を基調とする色に染めることはできません。
【 顔料仕上げ 】 : 皮革の表面にペンキを塗るように色付けを行います。
均一な色に仕上がり、また耐水性に優れています。
キズを隠してきれいな表面になりますが、革の風合いはある程度損な
われます。 また、表面に塗ってある塗料で隠れてしまうため、経年変化が
外見には表れにくいところがあります。
一般的に多く用いられているのは、顔料仕上げとなります。
【 素仕上げ 】 : タンニンなめしを施したあと色づけは行わず、簡単な保
存処理のみを行います。
革が本来もっている風合いを出すことができ、革の種類による個性が表
れやすく、経年変化によって同じものが2つとない個性的な風合いになって
いきます。
《 皮革の仕上げ 》
【Ⅰ.素仕上げ系 】
色づけはなされません。 革が劣化したり変色したりするのを防ぎ、素の
状態の革の美しさを保つためオイルを塗り、サンドペーパーで表面ををなめ
らかにする作業のみを行います。
《 ヌメ 革 》 : タンニンなめしを施した牛革で、「ベジタブル・レザー」 とも呼
ばれています。
基本的には 「染色」 や 「塗装」 が全くなされていない革を指しますが、
最近では、薄く染色している革もヌメ革と呼ばれるようです。
「革そのもの」 の味わいがあり、経年変化(エイジング) を楽しむの
には最もふさわしい革です。 使い込んでいくうちに、肌色から 「飴色」
に変化していき、色が濃くなっていきます。
上の画像に見られるように、着色では得られない味わいのある茶色
変化していき、1つ1つが全て違った表情を持つようになります。 また、
非常に手になじみやすいという特徴もあります。
しかし一方では、ごく簡単ななめし加工しかなされていないので、水
にも油にも弱く、一度しみ込むとシミになってしまいます。
よって、ユーザーの使い方やメンテナンス次第では、ほかの革では
得られない魅力的な状態で長く使用できる革だといえます。
また近年では、廃棄しても有害物質が発生せずに土で分解されると
いうことで、地球に優しく 「エコロジーな革素材」 として改めて注目され
ているようです。
メンテナンスは2~3ヶ月に1回程度、銀面を布で優しく乾ぶきし、牛の
脚(膝)から採取した脂で作られる 「ニートフットオイル」 などを塗り込み、
最後に防水スプレーをかけます。
場合によっては、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを
極薄に塗るのも効果的です。
《 銀付き革 》 : 革本来の銀面の風合いを活かした仕上げ方法。 表面の
キメ細かな模様を消さずにそのまま残します。 耐久性、通気性ともに抜群
で、合成皮革よりも優れていると言われています。
《 アニリン仕上げ 》 : 銀付き革のうち、顔料を含まない染料と仕上げ剤
を使って仕上げた革。 透明感があり、キメ細かく、やわらかな手触りの革
になります。
【 Ⅱ.オイルド仕上げ系 】
オイルド仕上げは、革にたっぷりのオイルを染み込ませます。 しっと
りして重厚な輝きを放ちます。
革らしくどっしりと落ち着いた味わいがあり、新品のときと使い込んで
いったときの光沢の変化を楽しむことができ、多くの人に好まれています。
《 オイルドレザー 》 : 革をなめしたあとにオイルにつけてから、またさら
に油分を加えたもの。 水をよくはじくため、ブーツや登山靴などのアウト
ドア用のクツに多く使われていますね。
《 グローブレザー 》 : 主に野球のグローブ用として使われるため グロ
ーブレザーと名付けられました。 コシが強く丈夫で、しかも柔らかいのが
特徴。 小さなキズであれば手でこすってなぞるだけで目立たなくなります。
《 ロウ引き 》 : 革にロウを染み込ませたり、吹き付けたりする仕上げ方
法。 ロウ引きをすることで、革の表面や繊維が保護されます。 使い込ん
でいくと次第にロウがはがれ落ちて、味わい深いものになります。
《 ブライドルレザー 》 : ブライドル・レザーとは、カウハイドにタンニンな
めしを施し、天然染料で染色したあとに、あらためて獣脂と蜜ロウをブレ
ンドした 「ブライドル・グリース」 に数ヶ月~1年半もの間くり返し漬けこむ
ことで作られた極上の革です。
もともと乗馬の際の手綱を作るためイギリスで開発された加工法で、基
本的に職人の手仕事によってコーティングがなされます。
この方法で加工された革は芯までロウと脂が染み渡っていますので、と
ても頑丈で耐久性が高く、汚れや水に対しても強くなります。
また、使い込むほどに独特の艶を増していき、革本来の経年変化を楽
しめる革です。
ブライドル・レザーは、使い初めに 「ブルーム」 と言われる白い脂・ロウ
の粉が吹いていることがありますが、使い込んでいくうちに馴染みながら
消えていきます。
ブライドル・レザーは特殊な革なので、メンテナンスはブライドルレザー
専用のクリームを革全体に薄く塗り込んで乾くまで少し放置し、最後に柔
らかい馬毛のブラシでブラッシングして完了となります。
【 Ⅲ.アンティーク仕上げ系 】
皮革の表面にわざと色ムラをつくったり、キズを付けたりしてアンティーク
調に仕上げたもの。
《 アドバンチック 》 : 革に何色かの顔料を一度に重ね塗りして、状態を見
ながら色を落としていきます。 不揃いな色加減が何とも言えない風合いを
《 ウォッシュ 》 : 水洗いをしたあとに、絞ってできたシワをそのまま模様と
して用います。
《 クラッキング 》 : 皮革にあえてキズやひび割れを施したもの。 ただし、革
に直接キズをつけるのではなく、厚く塗った顔料の上からキズをつけます。
カジュアルに多く用いられるダメージ加工です。
メンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回程度で、銀面を布で優しく乾拭
きし、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを極薄に塗った
あと、やわらかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了です。
《 製品染め 》 : くつやカバン、衣服を縫製したあとに染色したもの。 こな
れ感と微妙な色ムラで使いこなされた風合いが出る。 縫製したあとに一度
脱色し、あらためて革に色づけする場合もあります。
⑥.「革」 について理解しよう (下)
http://perfect-news.blog.so-net.ne.jp/2013-11-06-5
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製革の作業には、大きく分けて準備工程、なめし工程、再なめし・染色・
加脂工程、仕上げ工程があります。
【 皮 と 革 】
動物の皮膚を剥いだあと、何の加工もなされていない 「原皮状態」 を
指して「皮」 と言い、その皮に 「なめし」 と言われる防腐処理を施し、もの
作りの材料として再生したモノを 「革」 といいます。
《 な め し 》
「なめし」 の目的は主に3つ。
①.防腐処理 (耐酵素性・耐薬品性)
動物の皮は生きているので、そのままだと用意にバクテリアに分解され
腐敗してしまいます。 これに対して、なめし剤を付与することで革の主成
分であるたんぱく質(主にコラーゲン繊維)に化学変化を起こして変性させ
ることで腐敗が防止されます。
②.耐熱性の付与
通常、哺乳類の皮の耐熱性は62℃~63℃前後であるが、なめしを行
うことで耐熱性が上昇します。 たとえば「牛革タンニンなめし革」の耐熱性
(熱収縮温度)は75℃~90℃、「牛革クロムなめし革」 であれば95℃~
120℃まで上昇します。
③.革らしさ、しなやかさを与えるため
一般に、皮はそのままだと固くなったり腐敗してしまったりします。 これ
らを防ぎ、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を加え、温かみのある感じを
だすことで革として長く利用することが可能になります。
なめし加工を施すことにより、単に動物の皮膚であった 「皮」 からモノ
の素材としての 「革」 へと生まれ変わります。
その工程は (a).まず始めに体毛と腐敗しやすい脂分を取り除き、
(b).次に 「なめし剤」 にひたすことにより皮の主成分であるたんぱく質
に化学反応を起こして変性させる。 これにより腐敗が防止されます。
(c).仕上げとして、革を柔らかく、またリンス効果を与えるため、主に合
成の脂を再び加える。
原始時代、人類は自らの唾液で皮をなめしていました。 やがて古代に
なると、植物に含まれるタンニンを利用してなめす方法が開発され (タン
ニンなめし)長らく採用されてきましたが、現在では化学薬品で処理される
ことが多くなりました。。
【 タンニンなめし 】
樹木や植物などから抽出した(天然の渋)を利用して革をなめす製法
で、「ベジタブルタンニンング」 とも呼ばれています。
革の切り口(コバ)が茶褐色、つまり 革ジャンでいうと 「茶芯」 になります。
型崩れしにくく丈夫、染料の吸収がよく染色しやすい、吸湿性に富む、使い
込むほどに艶や馴染みがでる、などの特徴があります。
反面、タンニンでなめす場合、タンニンを革の中心部分まで浸透させ
るためにタンニン濃度を徐々に上げていかなければなりません。 そのた
めには30以上の工程を踏まえる必要があり、非常に手間がかかります。
また、それは高コストにつながります。
皮革製品で 「飴色になる」 と表現されることがありますが、それはこ
のタンニンなめしによるものです。 また、カバンなど手縫いを施すモノに
は通常タンニンなめしの材料が用いられます。
「タンニンなめし」 は「クロムなめし」 とはちがって皮膚呼吸をする革の
で過剰なメンテナンスは控え、2~3ヶ月に1度ほど銀面を布で優しく乾拭
きし、牛の脚(膝)から採取した脂で作られている 「ニートフットオイル」 な
どのオイルを塗り込み、防水スプレーをかけます。
また、「マスタングペースト」 や 「ラナパー」 などのWAXを極薄に塗った
のち、馬革ブラシでブラッシングするのも効果的です。
【 クロムなめし 】
硫酸クロム、重クロム酸ナトリウム、カリウム塩、クローム塩などの金
属を用いた科学的な製法。
切り口が青白色、革ジャンで言うと、クロムなめしの場合青っぽいグレー
のような芯になります。 伸縮性が良い、柔軟でソフト感がある、吸水性が低
く水をはじきやすい、耐久力がある、比較的熱に強いなどの特徴があります。
衣料用にはタンニンなめしに比べて工程が少なく低コストのクロムなめし
が用いられる事がほとんどです。
反面、なめし工程で使うクロム物質が焼却により化学反応(酸化)を起こ
し、人体に有害な6価クロムに変化するので処分する際には注意が必要
だという問題があります。
クロムなめしレザーのメンテナンスの周期は2~3ヶ月に1度。銀面を布
で優しく乾拭きし、「マスタングペースト」 や 「ラナパー」 などのWAXを極薄
に塗ったあと、柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了。
上はまったく同じ革をちがう方法でなめしたもの。 左から、タンニン、
コンビネーション、クロム
【 混合なめし 】
混合なめし(コンビネーションなめし)とは、2種類以上のなめし製法の
特性や長所を活かした革のなめし製法。
作りたい革の用途や目的によって、必要な特性に設計できる科学的な
「なめし製法」 です。
「タンニンなめし」 ほどの仕上がりににはなりませんが、タンニン風レザ
ーの感じを出すことが可能で、しかも 「クロームなめし」 程度のコストで製
作できるので、現在のファッション業界で最もポピュラーな 「なめし製法」
となっています。
通常、「クロームなめし」 「タンニンなめし」 の順序でおこない、逆に 「タ
ンニンなめし」 「クロームなめし」 をすることを 「逆コンビネーションなめし」
といいます。
野球のグローブに用いられる牛革グローブレザーなどは 「混合なめし」
が採用されている。
混合なめしのレザーのメンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回ほどで、銀
面を布で優しく乾拭きし、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形W
Xを 「極薄に」 塗ったあと、柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングす
れば完了。
【 油なめし 】
革を動物の油(脂)に漬け込むことでなめす製法。 セーム革などがこの
製法によっています。 非常に柔軟で吸水性・耐水性が高く、洗濯も可能。
(※) セーム革とは、シカ、ヤギなどの皮の銀面を落として油なめしした革。
淡黄色で柔らかく、洗濯も可能。 衣料用、ガソリン濾過用、袋物、ガラスふ
きなどに使用されます。
(※) 革の表面のことを 「銀面」 と言います。 これは、明治時代、外国から
招いた技術者が革の表面のことを 「Grain」 (英語) と発音していたところ、
当時の日本人にはそれが 「ギン」 に聞こえたため、「銀」 という字が当てら
れたことによります。
【 オイルドレザーなめし 】
主に魚脂などの動物油でなめし加工された革で、「オイル・レザー」 「オイ
ルアップ・レザー」 とも呼ばれています。
革に独特の光沢感があり、シットリとした肌触りが特徴的。 また、なめさ
れたオイルによる撥水性が強く、水分による劣化が少ない革だといえます。
メンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回ほど。 銀面を布で優しく乾拭きし、
「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを 「極薄に」 塗ったあと、
柔らかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了。
《 皮革の染色 》
革の色づけ方法は、大きく分けて「染料仕上げ」「顔料仕上げ」「素仕上
げ」 の3通りがあります。
キズやシワが1つもない皮革は存在しません。 このキズを隠すのか生
かすのか? また、経年変化を楽しみたいのか、それとも新品のときの表
情を永く持続させたいのか?
・・・・・・ などを考慮して「色づけ」 と 「仕上げ」 の方法を選びます。
【 染料仕上げ 】 : 塗るのではなく、革に浸み込ませることで色をつける
方法のため、色の状態は半透明。 黒系や茶系の色は非常に美しく仕上
がります。
短所としては、着色剤が革に吸収されるので色ムラが起こりやすく、何
度も着色を重ねなければ均一な色になりません。
また、色の上に他の色を重ねて塗ることができません。 白や薄い灰色
などの、白を基調とする色に染めることはできません。
【 顔料仕上げ 】 : 皮革の表面にペンキを塗るように色付けを行います。
均一な色に仕上がり、また耐水性に優れています。
キズを隠してきれいな表面になりますが、革の風合いはある程度損な
われます。 また、表面に塗ってある塗料で隠れてしまうため、経年変化が
外見には表れにくいところがあります。
一般的に多く用いられているのは、顔料仕上げとなります。
【 素仕上げ 】 : タンニンなめしを施したあと色づけは行わず、簡単な保
存処理のみを行います。
革が本来もっている風合いを出すことができ、革の種類による個性が表
れやすく、経年変化によって同じものが2つとない個性的な風合いになって
いきます。
《 皮革の仕上げ 》
【Ⅰ.素仕上げ系 】
色づけはなされません。 革が劣化したり変色したりするのを防ぎ、素の
状態の革の美しさを保つためオイルを塗り、サンドペーパーで表面ををなめ
らかにする作業のみを行います。
《 ヌメ 革 》 : タンニンなめしを施した牛革で、「ベジタブル・レザー」 とも呼
ばれています。
基本的には 「染色」 や 「塗装」 が全くなされていない革を指しますが、
最近では、薄く染色している革もヌメ革と呼ばれるようです。
「革そのもの」 の味わいがあり、経年変化(エイジング) を楽しむの
には最もふさわしい革です。 使い込んでいくうちに、肌色から 「飴色」
に変化していき、色が濃くなっていきます。
上の画像に見られるように、着色では得られない味わいのある茶色
変化していき、1つ1つが全て違った表情を持つようになります。 また、
非常に手になじみやすいという特徴もあります。
しかし一方では、ごく簡単ななめし加工しかなされていないので、水
にも油にも弱く、一度しみ込むとシミになってしまいます。
よって、ユーザーの使い方やメンテナンス次第では、ほかの革では
得られない魅力的な状態で長く使用できる革だといえます。
また近年では、廃棄しても有害物質が発生せずに土で分解されると
いうことで、地球に優しく 「エコロジーな革素材」 として改めて注目され
ているようです。
メンテナンスは2~3ヶ月に1回程度、銀面を布で優しく乾ぶきし、牛の
脚(膝)から採取した脂で作られる 「ニートフットオイル」 などを塗り込み、
最後に防水スプレーをかけます。
場合によっては、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを
極薄に塗るのも効果的です。
《 銀付き革 》 : 革本来の銀面の風合いを活かした仕上げ方法。 表面の
キメ細かな模様を消さずにそのまま残します。 耐久性、通気性ともに抜群
で、合成皮革よりも優れていると言われています。
《 アニリン仕上げ 》 : 銀付き革のうち、顔料を含まない染料と仕上げ剤
を使って仕上げた革。 透明感があり、キメ細かく、やわらかな手触りの革
になります。
【 Ⅱ.オイルド仕上げ系 】
オイルド仕上げは、革にたっぷりのオイルを染み込ませます。 しっと
りして重厚な輝きを放ちます。
革らしくどっしりと落ち着いた味わいがあり、新品のときと使い込んで
いったときの光沢の変化を楽しむことができ、多くの人に好まれています。
《 オイルドレザー 》 : 革をなめしたあとにオイルにつけてから、またさら
に油分を加えたもの。 水をよくはじくため、ブーツや登山靴などのアウト
ドア用のクツに多く使われていますね。
《 グローブレザー 》 : 主に野球のグローブ用として使われるため グロ
ーブレザーと名付けられました。 コシが強く丈夫で、しかも柔らかいのが
特徴。 小さなキズであれば手でこすってなぞるだけで目立たなくなります。
《 ロウ引き 》 : 革にロウを染み込ませたり、吹き付けたりする仕上げ方
法。 ロウ引きをすることで、革の表面や繊維が保護されます。 使い込ん
でいくと次第にロウがはがれ落ちて、味わい深いものになります。
《 ブライドルレザー 》 : ブライドル・レザーとは、カウハイドにタンニンな
めしを施し、天然染料で染色したあとに、あらためて獣脂と蜜ロウをブレ
ンドした 「ブライドル・グリース」 に数ヶ月~1年半もの間くり返し漬けこむ
ことで作られた極上の革です。
もともと乗馬の際の手綱を作るためイギリスで開発された加工法で、基
本的に職人の手仕事によってコーティングがなされます。
この方法で加工された革は芯までロウと脂が染み渡っていますので、と
ても頑丈で耐久性が高く、汚れや水に対しても強くなります。
また、使い込むほどに独特の艶を増していき、革本来の経年変化を楽
しめる革です。
ブライドル・レザーは、使い初めに 「ブルーム」 と言われる白い脂・ロウ
の粉が吹いていることがありますが、使い込んでいくうちに馴染みながら
消えていきます。
ブライドル・レザーは特殊な革なので、メンテナンスはブライドルレザー
専用のクリームを革全体に薄く塗り込んで乾くまで少し放置し、最後に柔
らかい馬毛のブラシでブラッシングして完了となります。
【 Ⅲ.アンティーク仕上げ系 】
皮革の表面にわざと色ムラをつくったり、キズを付けたりしてアンティーク
調に仕上げたもの。
《 アドバンチック 》 : 革に何色かの顔料を一度に重ね塗りして、状態を見
ながら色を落としていきます。 不揃いな色加減が何とも言えない風合いを
《 ウォッシュ 》 : 水洗いをしたあとに、絞ってできたシワをそのまま模様と
して用います。
《 クラッキング 》 : 皮革にあえてキズやひび割れを施したもの。 ただし、革
に直接キズをつけるのではなく、厚く塗った顔料の上からキズをつけます。
カジュアルに多く用いられるダメージ加工です。
メンテナンスの周期は2~3ヶ月に1回程度で、銀面を布で優しく乾拭
きし、「マスタングペースト」 「ラナパー」 などの固形WAXを極薄に塗った
あと、やわらかい馬毛のブラシで丁寧にブラッシングすれば完了です。
《 製品染め 》 : くつやカバン、衣服を縫製したあとに染色したもの。 こな
れ感と微妙な色ムラで使いこなされた風合いが出る。 縫製したあとに一度
脱色し、あらためて革に色づけする場合もあります。
⑥.「革」 について理解しよう (下)
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