ガンダムと富野由悠季のイイ話 (下) [アニメ]
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(中) のつづきです。
さて、富野さんは「機動戦士ガンダム」 と奇跡の作品を生み出してしま
ったことによって2つの苦難を経験することになりました。
1つ。 図らずも自分自身が巨大な利権になってしまい、周囲の人間に
強制的に続編を作らされることになってしまった。 その過程の中で人間
のキタナイ部分をすべて見せつけられてしまい、精神的な地獄を体験さ
せられた。
2つ。 自身のキャリアの前半で、すでに歴史的な名作を生み出してしま
ったため、それ以降はずっと “ガンダムを超える” という不可能な課題を
背負ってしまった。
富野さんのガンダム以降の大作といえば「伝説巨神イデオン」 です。
まだ若かった富野さんは、1980年、つまりガンダムの翌年にイデオン
を制作しています。 内容は以下のようなものです。
地球人類が外宇宙へ移民を開始して50年が経過した遠い未来。 地
球人は2年前から移民を行っていたアンドロメダ星雲の植民星A-7・ソ
ロ星で異星人文明の遺跡を発掘。地球人類が外宇宙に進出して出会っ
た6度目の異星人であることから、「第6文明人」と呼称された。
一方その時、伝説の無限エネルギー 「イデ」 の探索のためにソロ星を
訪れた異星人バッフ・クランと地球人の移民が接触。 両者はやがて武力
衝突へと発展。 第6文明人の遺跡は合体し、巨大人型メカ 「イデオン」 と
なった。
地球人たちはイデオンで応戦しつつ、同じく発掘された宇宙船ソロ・シッ
プに乗り込み宇宙へ逃れる。 だが、その遺跡にこそバッフ・クランの探し
求める無限力 「イデ」 が秘められており、事態は局地紛争から星間戦争
へ進展してしまう。
安住の地を求めソロ・シップは地球人側の移民星に逃げ込むが、バッフ
・クランは執拗な追跡の手を休めない。 道中に様々な人間模様が繰り広
げられ、艦内に不和を抱えたまま宇宙を逃走し続けるが、次第にイデオン
とソロ・シップに異変が起こり始める。
イデオンは、ほぼガンダムのアンチテーゼであると言っていい作品です。
アンチガンダムとしての特徴は、ロボットや宇宙船同士による戦闘のシー
ンは極力控えられ、ソロシップ内での人間ドラマを中心に描かれている。
イデオンは身長120メートル、全身からミサイルを放つ、戦艦並に巨大な
イデオンガン。
最終回では、「イデの発動」 による破滅的な爆発によって敵も見方も物
理的にはすべてが消滅し、彼らは宇宙生命体へと変化した、と解釈できる
できるシーンで終わっています。
じつはイデオンも視聴率低迷によって43話の予定が39話で打ち切られ
るという事情があって、唐突な終わり方という印象になってしまいました。
結局、イデオンもアニメファンには受け入れられたものの、マニアック過ぎ
て一般には受けなかったようです。
また、その後のダンバインについても自ら失敗作であると評価しています。
つまりは、ガンダム以降は傑作を生み出せなかったということです。 そう
いう中で、ガンダムからおよそ20年間富野さんは格闘し、精神的にも苦し
みつづけます。
一方で、Zガンダム終了後、ガンダムの続編を作らないか? というオファ
ーは何度もあったようです。 それに対して 「ガンダムを自分の中から消去
した」という富野さんはその申し出を拒否し続けました。
しかし長い年月が経って、ガンダム制作のオファーにある変化が訪れます。
それまでは自分と同世代の人間が申し出をしてきていたものが、世紀末
の頃になってくると、自分よりもはるかに下の世代、つまり当時子供の頃に
ガンダムを観ていた世代の者たちが申し入れをするようになってきたのです。
それらの者たちは、以前の者たちのように利益を求めているのではなく、
富野さんを尊敬し、純粋にガンダムが大好きであることから、再びガンダム
で素晴らしい作品をつくりたいという思いをもった若者たちでした。
彼らは、ガンダムが作品としていかに素晴らしいかを語り、自分たちがガ
ンダムで楽しませてもらってきたことに対して富野さんに感謝の言葉を述べ
ました。
富野さんは、自分の子供ほどの年齢である彼らの訴えに、やがて心を動
かされていきます。
またその頃になると、20年にわたって自分なりにガンダム超えを目指して
闘い続けてきた結果、それがムリであるという事実、つまり自らの能力の限
界を受け入れることができるようになったといいます。
そして西暦2000年、若いスタッフたちとともに、富野さんは自らのライフワ
ークとして、再びガンダムシリーズの制作にとりかかります。
そして生み出されたのが 「∀ガンダム」 (ターンAガンダム)です。 このタイ
トルには2つの意味がこめられています。
1つ。 強制的に作らされたZガンダムの 「Z」 は、アルファベットの最後の
記号。 つまり、「これが最後のガンダムだ」 という悲壮な意味がこめられて
います。
「Z」 と名づけることで終わらせたガンダムから20年、再び最初の地点で
ある 「A」 に戻って新しくはじめようというという意味の 「ターンAガンダム」。
2つ。 「∀」 というのは「すべての~」 という意味を持つ論理記号。 すべて
を包括して原点に返るという意味を込めてのこの記号。
じつはこの話は、00年当時に、ターンAガンダムの制作にあたって NHK
の 「トップランナー」 という番組に出演した際の富野さん自身による話をまと
めたものです。
過去を振り返って富野さんは、「以前は本当に苦しかった。 メディアの取
材も表舞台への出演も極力断っていたので、こういう場所は20年ぶりです。
しかし今はすっかりふっ切れて、若いスタッフたちと一緒に新しいガンダム
を楽しんで作っています」 と笑っていた。
その時の富野さんは実に明るくて、番組のオープニングでは、なんとガン
ダムの着ぐるみを着てヘタクソなロボットムーブでウォークしながら時間をか
けて登場するというノリノリなサービスまで見せてくれました。
・・・・・・ さてさて、21世紀になって元気と自信を取り戻した富野さんです
が、一方では気難しい面があるようで、ケッコウな毒舌家でもあります。
じつは、これは宮崎駿監督についてもあてはまることなのですが、最後に
「番外編」 として、そのあたりのお話をしたいと思います。 2人とも、その発
言は相当に面白いです。
以下、(毒舌編) につづきます。
http://perfect-news.blog.so-net.ne.jp/2013-09-23-5
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(中) のつづきです。
さて、富野さんは「機動戦士ガンダム」 と奇跡の作品を生み出してしま
ったことによって2つの苦難を経験することになりました。
1つ。 図らずも自分自身が巨大な利権になってしまい、周囲の人間に
強制的に続編を作らされることになってしまった。 その過程の中で人間
のキタナイ部分をすべて見せつけられてしまい、精神的な地獄を体験さ
せられた。
2つ。 自身のキャリアの前半で、すでに歴史的な名作を生み出してしま
ったため、それ以降はずっと “ガンダムを超える” という不可能な課題を
背負ってしまった。
富野さんのガンダム以降の大作といえば「伝説巨神イデオン」 です。
まだ若かった富野さんは、1980年、つまりガンダムの翌年にイデオン
を制作しています。 内容は以下のようなものです。
地球人類が外宇宙へ移民を開始して50年が経過した遠い未来。 地
球人は2年前から移民を行っていたアンドロメダ星雲の植民星A-7・ソ
ロ星で異星人文明の遺跡を発掘。地球人類が外宇宙に進出して出会っ
た6度目の異星人であることから、「第6文明人」と呼称された。
一方その時、伝説の無限エネルギー 「イデ」 の探索のためにソロ星を
訪れた異星人バッフ・クランと地球人の移民が接触。 両者はやがて武力
衝突へと発展。 第6文明人の遺跡は合体し、巨大人型メカ 「イデオン」 と
なった。
地球人たちはイデオンで応戦しつつ、同じく発掘された宇宙船ソロ・シッ
プに乗り込み宇宙へ逃れる。 だが、その遺跡にこそバッフ・クランの探し
求める無限力 「イデ」 が秘められており、事態は局地紛争から星間戦争
へ進展してしまう。
安住の地を求めソロ・シップは地球人側の移民星に逃げ込むが、バッフ
・クランは執拗な追跡の手を休めない。 道中に様々な人間模様が繰り広
げられ、艦内に不和を抱えたまま宇宙を逃走し続けるが、次第にイデオン
とソロ・シップに異変が起こり始める。
イデオンは、ほぼガンダムのアンチテーゼであると言っていい作品です。
アンチガンダムとしての特徴は、ロボットや宇宙船同士による戦闘のシー
ンは極力控えられ、ソロシップ内での人間ドラマを中心に描かれている。
イデオンは身長120メートル、全身からミサイルを放つ、戦艦並に巨大な
イデオンガン。
最終回では、「イデの発動」 による破滅的な爆発によって敵も見方も物
理的にはすべてが消滅し、彼らは宇宙生命体へと変化した、と解釈できる
できるシーンで終わっています。
じつはイデオンも視聴率低迷によって43話の予定が39話で打ち切られ
るという事情があって、唐突な終わり方という印象になってしまいました。
結局、イデオンもアニメファンには受け入れられたものの、マニアック過ぎ
て一般には受けなかったようです。
また、その後のダンバインについても自ら失敗作であると評価しています。
つまりは、ガンダム以降は傑作を生み出せなかったということです。 そう
いう中で、ガンダムからおよそ20年間富野さんは格闘し、精神的にも苦し
みつづけます。
一方で、Zガンダム終了後、ガンダムの続編を作らないか? というオファ
ーは何度もあったようです。 それに対して 「ガンダムを自分の中から消去
した」という富野さんはその申し出を拒否し続けました。
しかし長い年月が経って、ガンダム制作のオファーにある変化が訪れます。
それまでは自分と同世代の人間が申し出をしてきていたものが、世紀末
の頃になってくると、自分よりもはるかに下の世代、つまり当時子供の頃に
ガンダムを観ていた世代の者たちが申し入れをするようになってきたのです。
それらの者たちは、以前の者たちのように利益を求めているのではなく、
富野さんを尊敬し、純粋にガンダムが大好きであることから、再びガンダム
で素晴らしい作品をつくりたいという思いをもった若者たちでした。
彼らは、ガンダムが作品としていかに素晴らしいかを語り、自分たちがガ
ンダムで楽しませてもらってきたことに対して富野さんに感謝の言葉を述べ
ました。
富野さんは、自分の子供ほどの年齢である彼らの訴えに、やがて心を動
かされていきます。
またその頃になると、20年にわたって自分なりにガンダム超えを目指して
闘い続けてきた結果、それがムリであるという事実、つまり自らの能力の限
界を受け入れることができるようになったといいます。
そして西暦2000年、若いスタッフたちとともに、富野さんは自らのライフワ
ークとして、再びガンダムシリーズの制作にとりかかります。
そして生み出されたのが 「∀ガンダム」 (ターンAガンダム)です。 このタイ
トルには2つの意味がこめられています。
1つ。 強制的に作らされたZガンダムの 「Z」 は、アルファベットの最後の
記号。 つまり、「これが最後のガンダムだ」 という悲壮な意味がこめられて
います。
「Z」 と名づけることで終わらせたガンダムから20年、再び最初の地点で
ある 「A」 に戻って新しくはじめようというという意味の 「ターンAガンダム」。
2つ。 「∀」 というのは「すべての~」 という意味を持つ論理記号。 すべて
を包括して原点に返るという意味を込めてのこの記号。
じつはこの話は、00年当時に、ターンAガンダムの制作にあたって NHK
の 「トップランナー」 という番組に出演した際の富野さん自身による話をまと
めたものです。
過去を振り返って富野さんは、「以前は本当に苦しかった。 メディアの取
材も表舞台への出演も極力断っていたので、こういう場所は20年ぶりです。
しかし今はすっかりふっ切れて、若いスタッフたちと一緒に新しいガンダム
を楽しんで作っています」 と笑っていた。
その時の富野さんは実に明るくて、番組のオープニングでは、なんとガン
ダムの着ぐるみを着てヘタクソなロボットムーブでウォークしながら時間をか
けて登場するというノリノリなサービスまで見せてくれました。
・・・・・・ さてさて、21世紀になって元気と自信を取り戻した富野さんです
が、一方では気難しい面があるようで、ケッコウな毒舌家でもあります。
じつは、これは宮崎駿監督についてもあてはまることなのですが、最後に
「番外編」 として、そのあたりのお話をしたいと思います。 2人とも、その発
言は相当に面白いです。
以下、(毒舌編) につづきます。
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